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生協の未収金回収に強い弁護士法人ニューステージが未収金回収率を高めます

実績と取り組み

実績の概要

平成26年(2014年)に東京都と神奈川県の生協からの依頼を受けて、生協の未収金回収業務をスタート。
出資金の取り扱いなど、生協独特の注意点をふまえたサービスを展開。
生協の未収金回収に関する情報発信も随時行っております。
全国からお問合せをいただき、2016年11月現在、全国15拠点の生協でご活用いただいています。

 

未収金ゼロ! コープみやざき様のレポート

――――――どこかに未収金ゼロの生協があるらしい・・・

様々な生協の方と未収金回収についてのお話をさせていただく中で、このような話題に触れる機会がありました。

「未収金ゼロ!」

最初に聞いたときは耳を疑いました。未収金回収に関わる者にとって、「ゼロ」というのは、目標とすべき境地ではありますが、現実的には決して辿り着けない桃源郷のようなものです。

正直言って、「いわゆる都市伝説のようなものかな?」との疑念は拭えませんでした。

店舗営業のレジ精算のみであれば、未収金ゼロというのもあり得ないことではありません。しかし、「後払い」を伴う宅配業務において、「未収金」の問題は切り離すことはできません。多数の顧客(組合員)の中には、「購入したけれども経済状態が悪化した。」という方もいるでしょうし、中には「破産した。」という人もいる可能性もあります。支払いにルーズな方もいます。悪質なケースでは、はじめから支払うつもりがなく、購入後逃げてしまうような方もいます。多くの顧客を対象とする取引では、一定の割合で、「未収金」が発生するのが常なのです。

私は、弁護士として、生協だけでなく、通販会社など、様々な業種の方から、未収金についてのご相談やご依頼を受けていますが、いずれの依頼者様も、未収金の問題に対しては様々な対策を図っています。未収金対策は、大きく分けると、二つの領域があります。

・未収金ができるだけ発生しないようにする取り組み

・発生した未収金をできるだけ早く回収する取り組み

これらの取り組みには、多くの生協や会社が努力されておりますし、当事務所も、お手伝いさせていただいております。(当事務所は、発生後の未収金回収の受任だけでなく、予防のアドバイスもさせて頂いています。)

しかしながら、いかに努力を重ねても、「全ての未収金を回収し尽くす!」というのは、簡単にできることではありません。

実際に「未収金ゼロ!」を達成されている生協が存在するのであれば、是非ともその取り組みについてお伺いしたいと思っておりました。なかなかその機会はありませんでしたが、当事務所からのFAXでのご連絡に対して、「生活協同組合コープみやざき」様からご連絡いただき、コープみやざき様が「未収金ゼロ!」の生協であるということを知ることができました。

興味があれば、すぐに行動するのが私のモットーです。すぐにアポを取らせていただき、ご快諾を得ました!

お会いいただいたのは、生活協同組合コープみやざきの未納金対策チームを率いる、元屋敷修一様(地域責任者支援課)です。元屋敷様には、突然のご依頼にもかかわらず、年始早々(平成28年1月)の、しかも土曜日にお伺いさせていただき、貴重なお時間を頂戴しました。貴重なお話をお伺いし、資料まで頂戴して、本当に感謝しております。

元屋敷様から、お伺いしたお話は、まさに「すごい!」の一言でした。詳しい内容は後述しますが、未収金回収にあたって、これほどの取り組みをなさっている団体を、私は知りません。未収金回収に関わる業務を行っている当事務所にとっても、本当に有益なお話の数々でした。

本当は、こっそり当事務所だけで独占したい情報ではあるのですが、もともとコープみやざき様は、その取り組みについて他の生協様にもオープンにされ、他の生協様からの問い合わせなどにも積極的にお答えになっておられます。コープみやざき様の取り組みは、日々未収金の予防と回収に尽力されている方々にとって、必ず役に立つ情報です。また、弁護士である私を通して、コープみやざき様の素晴らしい取り組みをご紹介させて頂くことも、皆様にとって有用であると思いますので、コープみやざき様のご了解の元、公開させていただきたいと思います。

※重要※

本稿に関する責任は、すべて弁護士法人ニューステージに帰属します。

コープみやざき様からお伺いしたお話を元に作成しておりますが、コープみやざき様には、本稿の内容についての責任は一切ございませんので、ご了承いただければと存じます。

 

第1 生活協同組合コープみやざき様の未収金の状況

コープみやざき様は、宮崎県内一円を事業指定地域とされており、総組合員数は24万7690名(2015年度末現在)です。2014年度のデータでは、2014年度の未収金となりうる総請求額が約161億円で、そのうち約7割が共同購入事業、約3割が店舗ならびに生活事業であるとのことです(コープみやざき様では、店舗・生活事業についても、一部口座振替での利用が可能となっています。)。

気になる未収金の状況ですが、もともと未収金がゼロないし極端に少なかったわけではありません。1999年時点では、6か月以上の未収金が、1199万円(407名)あったそうです。これが、2003年には295万円(46名)となり、2009年には、41万円(1名)となり、1名から数名程度の未収金が続いた後、

2013年、0円(0名)

2014年、0円(0名)

2015年、0円(0名)

となっており、「未収金ゼロ」を現在まで続けておられます。コープみやざき様においては、現在、4か月以上の滞納があったものを「未収金」として把握されていますが、このような4か月以上の滞納金が、2013年以降、ゼロであるということです。これは本当に驚くべき結果です。

1999年時点での未収金が、もともと約1200万円もあったことを考えても、そこから現在までに劇的な変化があったと言えます。

 

第2 未収金対策の取り組みのきっかけ

コープみやざき様における劇的な変化は、どのようなきっかけでもたらされたのでしょうか。お伺いしますと、1999年時点においても、当然のことながら、未収金対策の取り組みはなさっていたとのことです。しかしながら、当時の理事の方の「未収金が放置されているようで不安です。」との発言から、未収金について再検討する動きが発生しました。

当時、長期未収金は経理部の対応となり、「弁護士名での催告書」を送付し、それでも入金がない場合には、「裁判所を通じて強制執行を行う」という流れになっていたとのことですので、「放置」されていたというわけではありません。ほとんどの生協でも、同様の取り組みをなさっていると思います。しかし、このような対策をしていても、1999年当時、コープみやざき様の長期未収金は増加傾向にありました。先ほどの理事の方の発言から、コープみやざき様では、組合員に長期未収金の現状を伝え、アンケートを実施したところ、驚くほどの反応がありました。「こんなにお金を払わない人がいるのが信じられない。もっと厳しく対応してほしい。」というご意見です。このお話は、私も様々な生協の方とお話させていただく中で、とても共感するところです。

生協にとって、未収金の問題は、単に「売上げが入ってこない」という問題ではありません。きちんと毎回支払ってくれている組合員と、そうではない組合員との間の、公平の問題なのです。

元屋敷さんは、このようなアンケート結果に衝撃を受け、自ら、「長期未収金の担当」を志願されました。そこからコープみやざき様の奇跡が始まります。

 

第3 長期未収金の課題

それまで経理部に移管されていた長期未収金対応ですが、元屋敷さんは、この取り扱いを事実上禁止されました。もともと、各組合員に対する請求は、各支所で行われています。長期未収金であっても担当者を変えず、そのまま各支所での対応とした上で、直接未収金者に対応されている担当者(地域責任者ならびに支所長)が、未収金回収にあたって、何に困っておられるのか、何を対応困難と考えられているのか、全員にヒアリングされたそうです。

ところで、多くの生協や通販会社において、未収金については、一定期間を経過すると、部署が移管されたり、担当者が変更されるという取り扱いをされています。未収金対策を集約することにより、より効率よく進めることができるというメリットがありますが、一方で、「責任の所在が曖昧になる」という問題もあります。

コープみやざきの取り組みは、「未収金対策の責任感をすべての担当者に感じてもらう。」ことに寄与しています。言い換えれば、「職員全員が未収金対策に責任を持つ。」という意識改革です。

元屋敷さんが各責任者からヒアリングしたところ、長期未収金の回収には、共通した悩みがあることが分かりました。正確を期すため、元屋敷さんから見せて頂いた資料に記載されているとおりに列挙します。

① 長期未納者となかなか話せない。

② せっかく長期未納者と話せ、支払いの約束をとっても、約束が守られない。

③ 他の業務が忙しくて長期未納者に対応する時間がない。

④ 長期未納者といえども出資金を出している組合員さんであるし、お金がないと言われれば、気の毒で毅然とした対応がしにくい。

いずれも、長期未納者や未収金対策に共通する事情です。コープみやざき様だけでなく、すべての生協、会社で、同様の問題が生じています。元屋敷さんは、このような問題点を直視し、改革にあたることになりました。

 

第4 コープみやざき様の取り組み 

1 ①長期未納者となかなか話せない。

この問題は、未収金対策のご担当者の方は、大いに共感されると思います。未収金回収の委託を受け、回収に取り組んでいる当事務所においても、債務者と連絡がつかないことは、大きな問題です。逆に言えば、連絡がとれれば一気に回収できる確率は高まります。これは、私自身の経験から言っても、間違いありません。このように、未収金対策に立ちはだかる「長期未納者となかなか話せない」という問題に、どのように対応されたのでしょうか。

元屋敷さんは、様々な方からのヒアリングを通じて、「なかなか話せない」という悩みの大半は、「幻覚」ではないか?という結論に至ったといいます。「長期未納者は連絡に応じないのが普通」という先入観が常識化してしまったことにより、この常識に引きずられて、「なかなか話せない」という結論が先にあり、実際には、「連絡する努力をほとんどしていないのではないか。」と思い至ったのです。これは、本当に驚くべき内容であり、私自身を省みても衝撃を受ける内容でした。元屋敷さんは、「なかなか話せない」という錯覚を抜きにして、どんどん長期未納者に連絡を取っていきました。結果的には、ほとんどの方と連絡がとれたのです。しかも、その情報を、各職員の方にフィードバックしていきました。

すると、各職員の中で、「あれ?連絡取れるんだ」というように常識が変化してくる様子が感じられたそうです。さらに、元屋敷さんがガンガン連絡を取っているわけですから、職員の方々の中で、努力せずに「連絡がとれない」と報告しづらい空気が生まれてきました。

これは、本当に素晴らしい意識改革です。元屋敷さんは、自ら率先して「常識を覆す」ことにより、担当者、職員さんらの意識に訴えかけ、みんなの「常識」を覆してきたのです。もちろん、「長期未納者と連絡を取る」ということには、大きな苦労もあったと思いますし、様々な工夫をなさっておられます。グループ購入の他の組合員さんから、(未収金とは言わずに)在宅時間や家族構成を聞くという工夫もその一つです。元屋敷さんは、「大切なことは、教えて頂けるまで真剣に聞くことです。」とおっしゃっておられます。また、連絡がとれた長期未納者には、ご本人と配偶者の方の職場、連絡先を必ず聞くようにされていたということです。

2 ② せっかく長期未納者と話せ、支払いの約束をとっても、約束が守られない。

これも、未収金対策における大きな課題です。当事務所でも、債務者の方と連絡がつき、支払約束がとれても、支払ってもらえないことがあり、会議の中でしょっちゅう問題になっています。元屋敷さんは、このような長期未納者の方にも粘り強く連絡を取られています。「こちらが放置しない限り、いずれは必ず約束を守ります。」という力強い言葉が印象的でした。

3 ③ 他の業務が忙しくて長期未納者に対応する時間がない。

生協や会社の担当者の中には、未収金対応だけを業務としているわけではなく、経理など他の業務を兼任されている方も多くいらっしゃいます。また、コープみやざき様においては、先ほど書いたとおり、未収金対応を経理部に集約するのを止め、地域責任者の元に留めるようにされていましたので、尚更この問題は大きかったと思います。

もともと各地域責任者や、担当者、職員の方々は、ご自身の仕事を抱えておられます。その中で、未収金対応に長時間を割り当てるというのは大変な負担です。このように過大な業務を担当させたときにどうなるのか、ということについて元屋敷さんからお伺いしましたが、その内容は私にとっても非常に参考になるものでした。もともとの業務に長期未納者への対応業務も加わるのですから、たしかに過大な業務負担となります。

そのような場合、担当者は、無意識のうちに「連絡しやすい方、話しやすい方」など、問題の少ない方を中心に動かれることが多かったそうです。たしかに、限られた時間で対応するとすれば、「より回収しやすそう」な方から優先的に動いた方が効率的なように思います。しかし、そのようなやり方を認めてしまうと、結局、「回収困難な長期未納者」が後回しとなり、残ってしまうという結論になってしまいます。もともと、コープみやざき様では、「地域責任者が全未納者に配達中または電話で毎週連絡を行い、対応内容を文書にして支所長に報告し、支所長は必要に応じてアドバイスを行う。支所長はこの内容を長期未納金担当者(元屋敷さん)に文書で報告する。」という手順で業務を行っていました。しかしながら、当時、コープみやざき様では、毎週約4000名程度の未納者が発生しており、各地域責任者が上記の業務内容を貫徹するのは、非常な時間と労力を伴いました。その結果、「回収困難な長期未納者」が後回しとなっていたのです。

元屋敷さんは、上記の取扱いをやめました。「全未納者」ではなく、「8週以上未納者全員」に対して、毎週連絡を行い、その内容を報告するという業務内容に変更したのです。元屋敷さんは、このようなやり方について、「当時の状況では苦渋の選択でした。」とおっしゃっておられます。短期(8週以内)の未納者の中には、回収が容易な人もいれば、回収が困難な人も含まれています。このような未納者全員に対して同じ活動を行うというのは、非常に過大な業務となりますし、「連絡しやすい方」を優先しやすいという指摘も頷けるところです。そこで、元屋敷さんは、「8週以上未納者」という範囲を限定し、その方々について、徹底的に連絡する方法を採用したのです。

未収金回収の方法としては、

(1) 短期未納者への請求を厳しくすることで長期未納者を発生しないようにする

というやり方と、

(2) 長期未納者への請求を厳しくすることにより長期未収金をきちんと回収する

というやり方があります。

もちろん、理想をいえば、短期未納者への請求もきっちり行い、長期未納者への請求も厳しくすることです。しかし、限られたリソースの中で、どちらかに注力する必要がある場合もあります。「未収金を減らす」ためには、一見、(1)の方が優れているように思えます。しかし、元屋敷さんは、「未収金をゼロにする」ために、敢えて、(2)に注力する方法を採用しました。

簡単に言えば、「最初厳しくて、後々ゆるくなる」という回収方法から、「最初はゆるいけれど、後に厳格にする」という回収方法にシフトしたのです。その結果、担当者の中で、「厳しい対応になる前に処理してしまおう。」という意識も芽生えてきたことにより、相乗効果で、回収率が上がっていったといいます。もともと「8週以上未納者」としていたのが、その後、未納者の減少により、「6週以上未納者」になり、今では「4週以上未納者」に対して、厳しい対応をしているということです。

また、この方法のポイントは、「○週以上未納者」に絞って、その「全員」に対して連絡を行うところにもあります。「連絡が取りやすい」とか「回収しやすそう」という選別をせずに、思い切って「全員」に請求することによって、以前のような問題点は解消されていったと言えます。

4 ④ 長期未納者といえども出資金を出している組合員さんであるし、お金がないと言われれば、気の毒で毅然とした対応がしにくい。

特に、長期未納者の組合員の方が、未納となる以前から接することが多かった担当者の方にとって、大きな問題だったと思います。どうしても、心理的な抵抗感があったと思います。この点についても、元屋敷さんは、意識改革の必要性を感じました。

「毎週ルールを守って入金している組合員さんの想いを大切にしたい。その想いに応えるために、長期未納者へは、毅然とした態度で対応していかないといけない」という意識改革です。前にも書きましたが、未収金の問題は、真面目に支払っている組合員との公平の問題です。元屋敷さんは、前述の内容を担当者の方々にお伝えし、意識改革を図っていったといいます。

 

第5 「意識改革」の重要性

コープみやざき様の前項の取り組みの多くは、「意識改革」を内容とするものです。実は、元屋敷さんからは、交渉のテクニックや、未収金回収の具体的な手法的なものについても多数のご意見やご示唆をいただきました。その具体的な内容も、それぞれ素晴らしく、私にとって気付かされる点が多々ありましたので、今後機会がありましたらご紹介させて頂きたいと思いますが、何よりも、私が感銘を受けたのは、前項に書きました各項目と、その内容の根幹にある「意識改革」の部分です。元屋敷さんからお伺いした、2016年度の未納金対策チームの「活動スローガン」をご紹介させて頂きます。

① 毎週ルールを守って入金されている組合員さんの想いを大切にし、より気持ちよくご利用いただくため、長期未納金ゼロを目指し続けます。

② 地域で真面目に生活されている方々が、より気持ちよく楽しく生活できるためにも、長期未納者ゼロを目指し続けます。

③ 長期未納金ゼロを目指し続け、日本一利用制限がゆるやかで、日本一長期未納金が少ない組織を全員の力で作っていきます。

 ④ 高い志をもって未収金問題に取り組む全職員が、元気に意欲的に取り組めるようなチーム運営を目指します。

いずれも素晴らしいスローガンです。15,6年にわたるコープみやざき様の取り組みの中には、すぐに結果が現れたものもあったと思いますが、結果に結びつくまでに長い月日を要したものもたくさんあったと思います。

その中でも、全職員の方に向けて「意識改革」を行ってきたことは、即効性のあるテクニック的なことではなく、本当にジワジワと効いてきたのではないかと推測できます。コープみやざき様は、未収金問題に全員体制で取り組むことの意識改革の重要性を核心し、全力で「未収金ゼロ!」の目標に向かって邁進されてきました。

その結果が、3年連続「未収金ゼロ」という奇跡に繋がっていることは明らかです。

 

第6 最後に

本稿を書かせて頂くにあたり、元屋敷修一様に全面的にお世話になったことは、何度も触れさせて頂いたとおりです。元屋敷様のお考えや体験、苦労話をお伺いする中で、素晴らしいお人柄に触れさせていただきました。本当に感謝しております。

ありがとうございました。

 

生協向け コラム発信

当事務所では、多数の未収金回収の経験を元に、生協様のお役に立つ情報「債権回収のコツ」をFAXにて配信してきました。その内容をご紹介します。

債権回収のコツ その1・自社回収でやってはいけないこと

給料日や手当日を控え、そろそろ督促のご準備をされている時期かと思われます。自社での回収において、我々が最も重要だと考えるのは、債権回収の担当者を孤立させないことです。

そもそも、「うっかり」以外の滞納者は、他にも負債を抱えていることが大半の「手ごわい相手」です。中には、商品に難癖をつけたりして払わない人もいます。単なる「うっかり」であれば、担当者の督促による回収も可能ですが、上記のような「手ごわい相手」を相手にすると、その対応には非常にストレスが掛かる上に、結果として回収できないこともままあります。

また、担当者には、厳しく督促することと同時に会社のイメージも守ることも求められます。そのジレンマのためストレスを感じて、つい失言をしてトラブルになってしまったり、就業意欲が著しく低下したり、未処理案件が処理できないほど積みあがることもあります。

そこで、①他の業務と兼任にする、②少し多めの人員でシフトを組む、③外部の回収業者を併用するなどして、過度なストレスの集中を防ぐなどの対策を取り入れている企業もあります。

滞納者は他社に対して債権を抱えていることが大半ですので、決して妥協をせずに、自社の支払の優先順位を上げさせるように、絶え間なく接触し続ける必要があります。そこで、当事務所では、回収率を高めるとともに、社員のメンタルヘルス面からも、3か月以上も支払いがない滞納者については、回収の外部委託の検討もおすすめしています。[2016年5月号]

 

債権回収のコツ その2・債権回収は先手必勝!!

債権回収の大原則。

それは、滞納判明後の迅速な対応です。なぜなら、これまでの経験上、滞納後1か月を境に回収率は大きく下がってしまうからです。多くの債務者は、「支払わなければ」という意識を持っているのは翌月くらいまでで、それ以降になると督促されることに慣れてしまいます。

そのため、①滞納後1~2週間ですぐに督促状を送る、②督促状の送付から1週間以内に電話を掛ける、③出なければ時間帯を変えて掛ける、というように、1か月以内に複数回接触を試みることが、回収率を高めるコツになります。

それでも回収できない場合は「生協からの請求は無視している」可能性が高いので、アプローチを大きく変える必要があります。例えば、個別訪問を実施したり、弁護士名で請求をするのもその方法です。

回収に対する厳しい姿勢が相手にも伝わり、「無視できない」「払わないとダメ」と感じさせることができます。[2016年6月号]

 

債権回収のコツ その3・文書表現の工夫で回収率アップ!?

督促文書が相手に届き、相手にその文書を読んでもらうことが、債権回収の第1関門です。

読んでもらった後には、具体的に支払に向けた行動を起こしてもらわなければなりません。そのために、「請求金額」、「支払期限」、そして「支払方法」等を明記する必要がありますが、はたしてそれで十分でしょうか? 仮に2つの別の会社から、1万円ずつ請求されることを想定してください。

A社 「ご請求金額 ¥10,000―」 「本書到達後2週間以内にお支払いください。」

B社 「請求額 ¥10,000-」「本書到達後3日以内に必ずお支払いください。」

A社は控えめにB社は金額も期限も、かなり強調して書かれています。

もし手元に1万円しかなかったら場合、A社とB社のどちらを先に払いますか? 多くの債権者は複数の未払いを抱えていますので、心の中では常にこのようなギリギリの選択が行われています。督促時は、そのことを留意して文書表現を考える必要があるのです。[2016年7月号]

 

債権回収のコツ その4・ストレス対策

督促は相手方にもプレッシャーになるのと同時に、督促する側にも非常にストレスが溜まります。

組合員間の公平性を確保したい生協様としては、一歩も引くことなく回収を迫らなければならないことが多いでしょう。他方、言い訳ができないはずの債務者としても、様々な事情からどうしても手元不如意が解消できず、内心忸怩たる思いをしている最中に、ご担当者に感情的に対応してしまうこともよくあることと思われます。

債務者による理不尽な反応は、1件だけならなんとか耐えられますが、同じようなことが何回も繰り返されると、そのストレスは甚大です。また、特に近年は債務者がインターネットなどで出回っている情報を基にもっともらしい弁解をしたりするケースもあり、時には督促側の失言を誘発させ、それにつけ込まれる恐れもあります。

そこで ①複数人でローテーション対応する ②生協様の法務に詳しい弁護士などから研修を受ける ③不良債権化した案件については早期に外部委託を活用する といった対策を採ることが考えられます。[2016年8月号]

 

債権回収のコツ その5・「色」や「大きさ」で回収率が変わる??

回収率を高めるため、督促文書の表現には、日々工夫を凝らしていらっしゃるかと思われます。では、封書で督促する場合、その色や大きさにより、滞納者からの反応が大きく異なることはご存じでしょうか?

督促文書は滞納者に読んでもらわなければ全く意味がありません。何よりもまず「開封」してもらう必要があります。プライベートでもたくさんのダイレクトメールが届いていらっしゃるかと思いますが、そのすべてに目を通されていますか?ダイレクトメールも受領者に読んでもらうための工夫が随所に凝らされています。透明封筒を用いたりすることは代表的です。

さすがに、督促文書を透明封筒に入れて郵送するわけにはいきません。ですので、たとえば、封筒の色をビビットなものにしたり、大きめの封筒を使ったり、表面に「重要書類在中」と朱書するなどして受領者による「開封」の動機づけをします。当事務所でも、封筒の色については複数を使い分けることによって、反応率が高くなる傾向にあります。まだ、導入されていないのであれば、一度ご検討されてみてはいかがでしょうか。[2016年9月号]

 

債権回収のコツ その6・ボーナスシーズン突入間近!!

光陰矢のごとし。早くも晩秋にさしかかり、あと2ヶ月で1年が終わろうとしております。

サラリーマンの方であれば、当然ボーナスが気になるシーズンですね。果たして今年こそ出るのか、出るのはわかっているけれども、去年よりも多いのか少ないのか、思惑は人それぞれでしょう。

債権回収に携わる我々も当然のことながら、世の中のボーナス時期を強く意識しております。ボーナス支給のタイミングに合わせて、督促文書を数多く発送したり、架電督促を多めに行うようにしております。やはり、滞納者の多くは、日頃の家計のやりくりで精一杯であり、数千円たりとも追加で支払う金銭的余裕はないことがほとんどです。このような状況に陥っている相手に何度督促しても、いわばのれんに腕押し、糠に釘うちであって、回収効果は期待できません。

やはり、手元にお金があるときでないと、催促しても支払ってはもらえません。

公的年金や各種手当ての支給月(偶数月が多い)をはじめ、通常は年に2度あるボーナス支給時期を見逃す手はありません。督促体制の強化を図り、回収率の底上げを図る、ちょうどよいタイミングにさしかかってきたといえましょう。具体的手法について、ご不明な点がございましたら、いつでも我々にご相談ください。[2016年10月号]