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対談1 債務者の心理に迫る!

たくさん請求がある中で、支払いの優先順位をあげるには?

田中 今日の対談のお題は、債権回収業務の中で、いかに債務者の心理に迫っていくか?です。

下元 少額債権回収の仕事では、債務者もこちらもお互い顔が見えませんからね。その中で、相手の状況や心理を考えないといけない。探り合いです。

田中 そうですね。詐欺違うか?みたいに疑う人もいますし。

下元 そんな相手には、「堅いところから請求がきた」と思わせることが大事です。だから、携帯にショートメッセージを送る方法は、検討したけどやめたんですよね。架空請求っぽくなると思って。

田中 たくさん請求書が来てる中で、選り分けてうちに払ってもらわないといけないですからね。

下元 相手には、うちからの請求だけじゃなく、いろいろな請求が同時に来ている可能性が高い。債務者の心理として、物を買うた翌月ぐらいだったらまだ「払わないと」という後ろめたさがあるんですけど、半年や1年も経つと、払わないといけない、という感覚がどんどん薄れてくるんです。だから、どうやったら相手に「払わないと」と思ってもらえるか、それをいつも考えますね。

田中 そのためには、まずスピードですね。ほかの債権者より1日でも早く手紙が届けば、それだけで強い。

下元 そう。絶対スピードなんです。だから、うちはデータをいただいたら、必ずその日のうちか、遅くても翌日までには発送しています

田中 弁護士から手紙が来た、というだけで反応してくれる人は一定数いますよね。

下元 どのタイミングで払う人なのか、4つのレベルがあるんです。1は、普通に会社からの請求で払う人。ほとんどの人はここです。2は、弁護士からの請求が来たら払う人。3は、弁護士からの請求が来ても払わないけど裁判所から通知が来たら払う人。4は最後まで払わない人。2から4の中では、2の弁護士からの通知が来たら払う人というのが枠として広いので、いかにそこに届かせるか。そこですよね、工夫のすべては。

 

請求書を「捨てさせない」ために、封筒の色から攻める!

下元 余談ですけど、僕の後輩の弁護士のところに、セキュリティソフトの更新料か何か、払う気のない費用の請求書が来たんですって。更新作業もしてないのに請求書だけ来て、これは不当請求だ、自分は弁護士だし争ったろうと思って払わなかったそうなんです。そしたらどこかの弁護士から手紙が来て、結局「弁護士からの手紙が来たから払った」って。

田中 それは笑い話やけど、多くの人にとって、弁護士からの手紙というだけでインパクトはあるんやろうね。あと、大事だなと思うのが手紙の「見た目」。

下元 たとえば、びりびりってめくる圧着はがき。あれは、払う気がなくなっている人にとってはインパクトないと思います。

田中 封書のほうがやっぱり、わざわざ送った感がある。

下元 はがきだと字も小さいでしょう。字が目に飛び込んでこないと、心理的に作用しないというか、一生懸命読まない。相手の心に届かせようと思ったら、工夫しないといけないということやと思うな。

田中 それで、封筒の色もうちは黄色に変えたんですよね。なんとか目立たせようと考えて、赤い線を入れたり、いろいろやった中で黄色に決めたんです。

下元 ちょっとまぶしいような、目立つ黄色にね。封筒を変えてから、相手から電話がかかってくる件数が明らかに増えましたね。クレームも多いけど、それでも話すきっかけになるからいいんです。

田中 黄色い封筒でも反応がない場合、3通目からは赤い封筒にするんですけど……。

下元 赤にすると、さらにクレーム、増えますよね。

田中 とにかく色が気に食わんと。でも、それも反応ですから。何も反応がないより、いいんです。

下元 赤い封筒は、怖くて開けられなかったという人もいたな。怖くて開けられなかったんですといって、2、3日後に電話がかかってきた。

田中 それで、勇気を振り絞って封を開けたら、何千円払えやったというね。

下元 いかに封筒を開けさせるかは、封筒の段階から勝負が始まってるんです。僕らもこの債権回収の仕事するまで、回収率なんて考えたこともなかったし、弁護士名で手紙を送ればそれだけで効果があると思い込んでいた。でも、債権回収の仕事では、はがきか封筒か、封筒の色は何色か、事務所名はどこに書くか、細かい表現まで工夫しないといけない。

田中 大多数の債務者を相手に、確率論的な話でやっているので、より効果的な方法、最大公約数的ことを模索してますね。

下元 封筒に開封期限を入れてみたり、「親展」と入れてみたり。細かいこと、変えてみてますね。

 

 

3通目からジワジワと厳しく。手紙の文面で迫る!

下元 手紙の文面は、必ず田中さんと2人で一緒に作るんですけど、きついこと書いたら回収率があがるわけでもない。弁護士からの手紙やということで、封筒を開ける段階で身構えているので、そこできつく書いてあると、逆に反感を持つ人もいるんですよね。

田中 1通目の手紙を即日送って、一か月後に2通目、さらに1か月後に3通目を

送るケースが多いですけど、厳しくするのは3通め以降。

下元 3通目、4通目になったら、まずタイトルから変えますね。「支払い請求書」だったのを「督促状」に変えて、「法的手続き」というような言葉を本文に入れて。

誠実に対応していただけないことに対して、訴えかけるような文章を付け加えていきます。

田中 「10日以内」と期限を強調したり、金額を大きく目立たせたりね。ジワジワと表現を強めていく感じですね。

下元 期日を変えたりもしますね。「本書通達後10日以内」だったところを「5日以内」にしてみたり。日付はやっぱり気にされる方が多いですね。「3日以内」にしたら「短かすぎる」とクレームが来たり。

田中 期日を過ぎてから連絡がついた場合は、「海外に行ってて手紙を見てなかった」という言い訳が多いですね。

 

責めることが目的ではない。払ってもらうための電話交渉。

下元 僕らは書類を送って1週間から10日以内に必ず電話を掛けてるんです。電話に出ない人も多いですが、履歴が残っているだけでもインパクトはあると考えていて。

田中 関係を保つこと、途切れさせないことが大事ですからね。

下元 電話で話したとき、入院してたとか海外に行ってたとか、最初に言い訳から入る人は不誠実な場合が多いですね。

田中 逆に、すぐ支払いの話になる人は、お金がなくてすぐ払うことはできなくても、誠実に対応してくれてるなと思います。

下元 そうやね。ただ、明らかに嘘だなと思うようなことを言っている人に対しても、噓でしょうと言ってしまうと、その人の立場がなくなってしまう。だから、ある程度その人の話を聞いて、そういう事情やったんですねと言いながら払ってもらう方向にもっていきますよね。僕ら、喧嘩するのが目的で手紙を送ってるわけじゃないですからね。

田中 あと、電話したいけど電話できない、払いたくても払えないという人もいますよね。

下元 全額振り込めるならいいけど、ちょっとずつなら払えるんだけどというような場合。そういう人たちのために、僕らアンケートを作ってね。

田中 そうそう。いつ払っていただけるのか。分割払いなどの要望はあるかなど、それを請求書と同封して、FAXなどで送って下さいというのを入れていいます。3万円は無理やけど、1か月1万円ずつなら払える。でも1万円ずつ払わせてくださいという勇気がない人がいる。そこでアンケートを作ったわけです。

下元 アンケートを入れるということは、分割でもいいよという意思表示になってしまうのでは、という問題もあります。それでも、アンケートに書いていただいた内容が、ある程度許容できる範囲の分割案なら受け入れています。依頼者さんとの協議の上で、やっているところとやっていないところがありますけど、回収率という観点からすると、半分でも回収したら50パーセントですからね。

田中 ゼロよりずっといい。アンケート、100通送ったら5、6通は返事がきますよね。

下元 その5~6%の人は、全額すぐに払うことも、電話で交渉することもできなかった人ですからね。

 

いかに債務者の心理に迫るか? 実験は続く。

田中 封筒の色を変えたり、文字の大きさを変えてみたり、アンケートを作ったり。こんなことを細々とやってる弁護士は、あまりいないでしょいうね。

下元 やってると結果が出てくるから、さらに工夫したくなるんですよね。僕らが債務者の方にアプローチする方法って、まず手紙、それから電話、電話や手紙でコンタクトが取れるようになれば何かが始まっていくという形なので、最初はそれしか工夫のしようがない。だから今でも、ちょっとこういうの試そうかみたいのは、つねにめちゃくちゃ考えてます。

田中 すごい効果があったのはあれやね。コンビニ収納用紙。債務者の気持ちになったら、そりゃ圧倒的に便利ですからね。

下元 印刷した用紙がちゃんとコンビニのバーコードで読めるかどうかテストしたり、大変でしたけどね。でも、あれは早い段階でやってよかった。一般的には、弁護士からの手紙といえば、振込口座が書いてあって、そこに払いなさいと書いてあるだけ。

田中 それじゃハードルが高い。ちょっとでも低くしないと。

下元 コンビニ用紙で払っていただくと90円手数料がかかるんです。それ、じつはうちの事務所持ちになってるんです。

田中 でも、それで成績があがればペイできるので。数千円の未払い金だったら、コンビニで払えるなら何かのついでに払おうかと思う人は多いはず。債務者の人の立場になったら、そうですよね。

下元 あといまは、封筒のサイズを大きくしてみたいです。ポストにギリギリ入る大きさに。いろいろ工夫して、効果を測定していくのはおもしろいですね。おもしろいいという言い方おかしいですけど。

田中 ふたりで折に触れて、次は何やってみようかと話してますね。

下元 僕は大体、変なこと言うんですけど。でも田中さんに止められたことはないかな。

田中 なんでも試してみて、マイナスはないですからね。壮大な実験を続けている感じです。

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