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生協の未収金回収に強い弁護士法人ニューステージが未収金回収率を高めます

対談 未収金回収の極意

いかに回収率をあげるのか?
弁護士・下元高文が、未収金回収の極意を語ります。対談1 債務者の心理に迫る!

たくさん請求がある中で、支払いの優先順位をあげるには?

田中 今日の対談のお題は、債権回収業務の中で、いかに債務者の心理に迫っていくか?です。

下元 少額債権回収の仕事では、債務者もこちらもお互い顔が見えませんからね。その中で、相手の状況や心理を考えないといけない。探り合いです。

田中 そうですね。詐欺違うか?みたいに疑う人もいますし。

下元 そんな相手には、「堅いところから請求がきた」と思わせることが大事です。だから、携帯にショートメッセージを送る方法は、検討したけどやめたんですよね。架空請求っぽくなると思って。

田中 たくさん請求書が来てる中で、選り分けてうちに払ってもらわないといけないですからね。

下元 相手には、うちからの請求だけじゃなく、いろいろな請求が同時に来ている可能性が高い。債務者の心理として、物を買うた翌月ぐらいだったらまだ「払わないと」という後ろめたさがあるんですけど、半年や1年も経つと、払わないといけない、という感覚がどんどん薄れてくるんです。だから、どうやったら相手に「払わないと」と思ってもらえるか、それをいつも考えますね。

田中 そのためには、まずスピードですね。ほかの債権者より1日でも早く手紙が届けば、それだけで強い。

下元 そう。絶対スピードなんです。だから、うちはデータをいただいたら、必ずその日のうちか、遅くても翌日までには発送しています

田中 弁護士から手紙が来た、というだけで反応してくれる人は一定数いますよね。

下元 どのタイミングで払う人なのか、4つのレベルがあるんです。1は、普通に会社からの請求で払う人。ほとんどの人はここです。2は、弁護士からの請求が来たら払う人。3は、弁護士からの請求が来ても払わないけど裁判所から通知が来たら払う人。4は最後まで払わない人。2から4の中では、2の弁護士からの通知が来たら払う人というのが枠として広いので、いかにそこに届かせるか。そこですよね、工夫のすべては。

 

請求書を「捨てさせない」ために、封筒の色から攻める!

下元 余談ですけど、僕の後輩の弁護士のところに、セキュリティソフトの更新料か何か、払う気のない費用の請求書が来たんですって。更新作業もしてないのに請求書だけ来て、これは不当請求だ、自分は弁護士だし争ったろうと思って払わなかったそうなんです。そしたらどこかの弁護士から手紙が来て、結局「弁護士からの手紙が来たから払った」って。

田中 それは笑い話やけど、多くの人にとって、弁護士からの手紙というだけでインパクトはあるんやろうね。あと、大事だなと思うのが手紙の「見た目」。

下元 たとえば、びりびりってめくる圧着はがき。あれは、払う気がなくなっている人にとってはインパクトないと思います。

田中 封書のほうがやっぱり、わざわざ送った感がある。

下元 はがきだと字も小さいでしょう。字が目に飛び込んでこないと、心理的に作用しないというか、一生懸命読まない。相手の心に届かせようと思ったら、工夫しないといけないということやと思うな。

田中 それで、封筒の色もうちは黄色に変えたんですよね。なんとか目立たせようと考えて、赤い線を入れたり、いろいろやった中で黄色に決めたんです。

下元 ちょっとまぶしいような、目立つ黄色にね。封筒を変えてから、相手から電話がかかってくる件数が明らかに増えましたね。クレームも多いけど、それでも話すきっかけになるからいいんです。

田中 黄色い封筒でも反応がない場合、3通目からは赤い封筒にするんですけど……。

下元 赤にすると、さらにクレーム、増えますよね。

田中 とにかく色が気に食わんと。でも、それも反応ですから。何も反応がないより、いいんです。

下元 赤い封筒は、怖くて開けられなかったという人もいたな。怖くて開けられなかったんですといって、2、3日後に電話がかかってきた。

田中 それで、勇気を振り絞って封を開けたら、何千円払えやったというね。

下元 いかに封筒を開けさせるかは、封筒の段階から勝負が始まってるんです。僕らもこの債権回収の仕事するまで、回収率なんて考えたこともなかったし、弁護士名で手紙を送ればそれだけで効果があると思い込んでいた。でも、債権回収の仕事では、はがきか封筒か、封筒の色は何色か、事務所名はどこに書くか、細かい表現まで工夫しないといけない。

田中 大多数の債務者を相手に、確率論的な話でやっているので、より効果的な方法、最大公約数的ことを模索してますね。

下元 封筒に開封期限を入れてみたり、「親展」と入れてみたり。細かいこと、変えてみてますね。

 

3通目からジワジワと厳しく。手紙の文面で迫る!

下元 手紙の文面は、必ず田中さんと2人で一緒に作るんですけど、きついこと書いたら回収率があがるわけでもない。弁護士からの手紙やということで、封筒を開ける段階で身構えているので、そこできつく書いてあると、逆に反感を持つ人もいるんですよね。

田中 1通目の手紙を即日送って、一か月後に2通目、さらに1か月後に3通目を

送るケースが多いですけど、厳しくするのは3通め以降。

下元 3通目、4通目になったら、まずタイトルから変えますね。「支払い請求書」だったのを「督促状」に変えて、「法的手続き」というような言葉を本文に入れて。

誠実に対応していただけないことに対して、訴えかけるような文章を付け加えていきます。

田中 「10日以内」と期限を強調したり、金額を大きく目立たせたりね。ジワジワと表現を強めていく感じですね。

下元 期日を変えたりもしますね。「本書通達後10日以内」だったところを「5日以内」にしてみたり。日付はやっぱり気にされる方が多いですね。「3日以内」にしたら「短かすぎる」とクレームが来たり。

田中 期日を過ぎてから連絡がついた場合は、「海外に行ってて手紙を見てなかった」という言い訳が多いですね。

 

責めることが目的ではない。払ってもらうための電話交渉。

下元 僕らは書類を送って1週間から10日以内に必ず電話を掛けてるんです。電話に出ない人も多いですが、履歴が残っているだけでもインパクトはあると考えていて。

田中 関係を保つこと、途切れさせないことが大事ですからね。

下元 電話で話したとき、入院してたとか海外に行ってたとか、最初に言い訳から入る人は不誠実な場合が多いですね。

田中 逆に、すぐ支払いの話になる人は、お金がなくてすぐ払うことはできなくても、誠実に対応してくれてるなと思います。

下元 そうやね。ただ、明らかに嘘だなと思うようなことを言っている人に対しても、噓でしょうと言ってしまうと、その人の立場がなくなってしまう。だから、ある程度その人の話を聞いて、そういう事情やったんですねと言いながら払ってもらう方向にもっていきますよね。僕ら、喧嘩するのが目的で手紙を送ってるわけじゃないですからね。

田中 あと、電話したいけど電話できない、払いたくても払えないという人もいますよね。

下元 全額振り込めるならいいけど、ちょっとずつなら払えるんだけどというような場合。そういう人たちのために、僕らアンケートを作ってね。

田中 そうそう。いつ払っていただけるのか。分割払いなどの要望はあるかなど、それを請求書と同封して、FAXなどで送って下さいというのを入れていいます。3万円は無理やけど、1か月1万円ずつなら払える。でも1万円ずつ払わせてくださいという勇気がない人がいる。そこでアンケートを作ったわけです。

下元 アンケートを入れるということは、分割でもいいよという意思表示になってしまうのでは、という問題もあります。それでも、アンケートに書いていただいた内容が、ある程度許容できる範囲の分割案なら受け入れています。依頼者さんとの協議の上で、やっているところとやっていないところがありますけど、回収率という観点からすると、半分でも回収したら50パーセントですからね。

田中 ゼロよりずっといい。アンケート、100通送ったら5、6通は返事がきますよね。

下元 その5~6%の人は、全額すぐに払うことも、電話で交渉することもできなかった人ですからね。

 

いかに債務者の心理に迫るか? 実験は続く。

田中 封筒の色を変えたり、文字の大きさを変えてみたり、アンケートを作ったり。こんなことを細々とやってる弁護士は、あまりいないでしょいうね。

下元 やってると結果が出てくるから、さらに工夫したくなるんですよね。僕らが債務者の方にアプローチする方法って、まず手紙、それから電話、電話や手紙でコンタクトが取れるようになれば何かが始まっていくという形なので、最初はそれしか工夫のしようがない。だから今でも、ちょっとこういうの試そうかみたいのは、つねにめちゃくちゃ考えてます。

田中 すごい効果があったのはあれやね。コンビニ収納用紙。債務者の気持ちになったら、そりゃ圧倒的に便利ですからね。

下元 印刷した用紙がちゃんとコンビニのバーコードで読めるかどうかテストしたり、大変でしたけどね。でも、あれは早い段階でやってよかった。一般的には、弁護士からの手紙といえば、振込口座が書いてあって、そこに払いなさいと書いてあるだけ。

田中 それじゃハードルが高い。ちょっとでも低くしないと。

下元 コンビニ用紙で払っていただくと90円手数料がかかるんです。それ、じつはうちの事務所持ちになってるんです。

田中 でも、それで成績があがればペイできるので。数千円の未払い金だったら、コンビニで払えるなら何かのついでに払おうかと思う人は多いはず。債務者の人の立場になったら、そうですよね。

下元 あといまは、封筒のサイズを大きくしてみたいです。ポストにギリギリ入る大きさに。いろいろ工夫して、効果を測定していくのはおもしろいですね。おもしろいいという言い方おかしいですけど。

田中 ふたりで折に触れて、次は何やってみようかと話してますね。

下元 僕は大体、変なこと言うんですけど。でも田中さんに止められたことはないかな。

田中 なんでも試してみて、マイナスはないですからね。壮大な実験を続けている感じです。

対談2 自社回収の限界

自社回収は担当者の精神的負担が大きい

今回は対談形式ではなく、下元が一人で「自社回収の限界」というテーマでお話します。通販会社などの担当者の方は、僕らに債権回収の仕事を依頼しながら、ご自分でも債権回収業務をされているケースが多いんですね。最初の請求で未払いだった人に対して請求を行っている部署があって、その部署の方が、途中からうちの事務所に依頼してくださるという形です。担当の方を見ていて、やっぱり大変な仕事なんだろうなと思います。僕らは弁護士ですから、払ってくれない人を相手に話をしたりというのも普通の仕事の一環で抵抗なくできますが、普通の会社員の方、いままで代金を払ってくれないような人と接することのなかった方が、違う部署から配属されてその部署に担当という形でやってらっしゃると、大変だと思うんです。

一番しんどいのは、精神的な負担でしょうね。むちゃくちゃなこと言う人や、払わないかんと思っていたとしても何とか逃れようとする人も多いですから、そういう人らと話すのは、精神的にかなり負担が重い仕事じゃないかなと思います。

電話で「今から行くぞ」とか、おどしみたいなことを言ってくる人もいます。そうでなくても、長々と愚痴を聞かされたり。そういう人たちをずっと相手にして、支払ってくださいとお願いをしていくというのは大変ですよね。しかも、それだけ苦労して、じゃあ自社回収で成果が上がってるかというと、実際それほど上がってないのが現状だと思うんですね。手紙を何度も出されたり、電話をかけられたり、そうやって時間や人件費をかけても、全く効き目がない人もいますから。そもそも相手はみんな、その会社からの請求書を見ても払わなかった人たちです。そういう人が別の請求書が届いたからといってじゃあ払うのか。電話がかかってきたら払う人もいるでしょうし、うっかりしてたという人もいるでしょうけど、それでも払わない人というのがたくさん含まれてると思うんです。精神的につらい仕事であることに加えて、なかなか成果があがらないとなると、つらいですよね。

みなさん、いろいろ工夫されてらっしゃって、土日に電話をかけたり、仕事が終わった時間帯を見計らってかけたりもされてらっしゃるんですけど、結局それも、普通の人が仕事をしてないような時間まで働くことになるので。そういったことも負担の原因になっているという話はよく聞きます。

 

それでも外部に委託できない事情とは?

債権回収の部署の規模は、もちろん会社の規模で変わってきますが、僕が思っていたよりも、会社の規模に対して、未収金の回収をされてらっしゃる人の数は多くないです。思ったより少ない人数で回されているので、お一人お一人にかかる負担は相当大きいんじゃないかなと思いますね。そういう状況でやってきて、会社が大きくなった、売り上げが伸びて未集金も増えてきた、担当者の方々がパンク寸前になっているということで、うちにご依頼いただくケースも多いですね。

パンク寸前まで外部委託されない理由のひとつは、そもそも弁護士事務所やサービサーなど、頼めるところの存在が知られていないということやと思います。弁護士に頼むのはもう少し大きな問題、例えば契約の解釈が問題になるような話だとか、そういう業務を頼むものであって、数千円単位の債権回収を弁護士に頼むという発想がなかったと言われることも多いです。そういう会社さんでも、顧問弁護士さんはいらっしゃったりするんです。クレーマーみたいなきつい債務者との対応に関しては依頼したりというのはあるんですけれども、未集金の回収を顧問弁護士さんのところでさっと引き受けてもらえるかというと、事務所の体制であったり、その先生のお考えであったりとかで、受けてもらえないと。ほかには、頼めることは知っていても、コストを気にされているケースもあると思います。

さらに、情報管理についても、みなさん気にされています。会社のお客様の情報ですし、支払ってもらえないというのもセンシティブな情報なので。あとは会社のイメージですね。多くの会社さんが、自社の担当者なら会社のイメージを大事にするだろう、だから自社の担当者に委ねるのがいいだろうというお考えで自社回収を選択してらっしゃると思うんです。ただ、実際はなかなか難しい問題で、会社のために何をすべきかというところで、その担当者の方の使命としては、より多くの回収を図るべきなんですよね。そこでたくさん回収をしようと思うと、支払ってもらえていない人に対して厳しい口調になってしまってトラブルになったり、インターネットに書き込まれてイメージダウンになったりするということもあるので、実は会社の方が思ってるほどイメージダウンを防止する効果というのは、自社回収にはないんじゃないかと僕は思っています。

 

「弁護士から請求すること」の効果

僕らは弁護士という資格の中で請求をしてますので、弁護士からの手紙が着いた時点で、相手に支払わなくてはいけないと思わせる効果があるんですね。ですから、電話ではそれほど厳しいことは言いません。僕らがどんな風に電話をしているか、たまに依頼者の方にお話ししますと、そんなに優しく言ってるんですかと驚かれるくらいです。厳しい言葉を投げかければ相手が反省して払ってくれるのかというと、実はそうではなくて、もう少し別のところに訴えかけるほうが効果的だったりしますので。

その点、自社回収の場合は難しいと思います。優しく言うと払ってもらえなかったり、効果が薄かったりもしますので。代金を支払っていない人というのは、性格的にルーズだったりという方も多いので、優しくすると甘えてしまって、ずるずると払わなくなる可能性があります。それでも僕らは厳しくするほうがいいとは思いませんが、かといって、じゃあ自社の担当の方が、僕らのような優しい言い方で回収ができるのかというと、難しい。やっぱり「弁護士からの手紙」「弁護士からの電話」というところで効果を上げているのかなと思います。僕らとしては、厳しい言葉で言うことよりも、支払い義務があると理解していただくことが重要だと思っていますが、それを効果的に伝えるのは、自社では難しいのではと思いますね。

あとは、よくあるのが、「どこまで言っていいかわからない」というご相談です。法に触れてしまう、たとえば「おどし」になったりしたら困るというお話ですね。請求して、払ってくださいと伝えるために、じゃあこういう言葉は使っていいのかと、僕ら弁護士は、経験の中で法律的なことも把握していますが、専門家でなければわからないですよね。それで恐る恐る、どこまで言っていいか迷いながら対応を続けているということが、精神的なストレスにもつながっていくでしょうし、効果もなかなか上がらない原因だろうと思います。

 

乗り換えのハードルは、実は高くない

ただ、やっぱり会社としては、弁護士なりサービサーなりに依頼するとコストがかかるという懸念があると思うんです。それに、新しいことをするのはハードルが高いですよね。回収率が上がって会社にとって良くなるんだとわかっていても、積極的に会社の中で稟議を上げていくのは手間もかかりますし、本当に信用できる弁護士なのか、情報の管理体制はどうなっているのか、そういったものをチェックする必要もある。さらに、毎月発生する債権をどういうふうに扱っていくのかとかという問題もありますよね。そういう手間を考えると、最初は躊躇されると思います。ただ、いつも僕言うんですけれども、委託した後は、やはり弁護士に頼むことで負担が軽減される面は非常に大きいと自信を持って言えます。毎月の委託も、最初の段取りさえつけたら、あとは毎月の作業になっていきますので。実際に、負担が減ったと喜ばれている担当者さんは多いです。

たとえばネット通販などは、全く顔も見ない、電話もしないですから、未集金は発生しやすいです。請求書をそもそも見ていない、郵便物がどんどんたまっているという人も多いと思います。債務者の方にも事情があって、お買い物された後で病気になってしまったとか、そういう方もいらっしゃいますよね。ほかにも、引っ越しをされたりとかして手紙が届かなくなった方とか、そういう方がたくさんいらっしゃることも考えると、やはり自社回収では限界があります。弁護士なら、住民票から行方不明者の調査もできますから。やはり、どこかで弁護士に依頼するという形で進めていかれたほうがいいと思います。自社回収で限界を感じている方は、ぜひご相談ください。

対談3 お試し委託のすすめ

未収金回収のセカンドオピニオン

田中 今日の対談のお題は、「お試し委託のすすめ」です。未収金の回収を自社でやられている場合でも、外部に委託している場合でも、「いまと変えたいな」と思ったとき、一気にすべて切り替えるというのは難しいと思います。そこで、お試し委託をおすすめしたいと。

下元 いままでの方法を続けながら、債権の一部をうちに委託してみてください、という話ですね。セカンドオピニオン的な。必ずしも委託先を一社に絞る必要はないですからね。

田中 実際に、ある程度の規模の会社さんになると、債権を分けて発注されてるところもありますよね。地域で分けたりね。

下元 うちでしたら北海道でも沖縄でも、全国から受託しますけど、たまに地域の特殊性が気になるという会社さんもいますね。たとえば、普段は東京の事務所に頼んでる会社さんが、関西より西の債務者の債権だけうちに委託されるというケースもあります。

田中 僕らがいろいろ債権回収のやり方を試しているように、依頼者さんもいろいろと試されてるんでしょうね。1つの方法として、債権を分けて複数の事務所に依頼して、回収率を比べてみるというのもありかと思います。

下元 そういう形でうちに頼んでもらえたら、実力をお見せできて、きっと選んでいただけると思ってます。そういう意味でお試し委託をおすすめしたいんです。委託先を変えたいなと思っているときに、いきなり全部やめるのはドラスティック過ぎるけれども、一部の債権だけを田中・下元法律事務所にちょっとやらせてみようかとか、そういうのはありだと思うんです。

田中 事務所ごとの特殊性もあるでしょうし、対応のよさ、悪さとか。回収率なんかもう完全に数字で出てきますから、依頼者さんの側でそれを把握されることはできますもんね。よりよいところが決まるまで、複数に頼んでみると。

下元 これは、債権回収業務を離れたところで考えてもわかります。たとえば顧問先の弁護士がいる場合、そこにしか相談しないというのはいい面もあるんですけれど、固定化してしまう部分もあるし、業務の中身によっては、いままでやってもらっているタイプのやり方じゃなくて、もうちょっとがっつり取り組んでほしいとかいう場合もあると思うんですね。だから、いろんな弁護士に頼んでみて、比べて選ぶというのは、一般論としても全然普通の話です。債権回収業務でも同じで。そもそも少額債権の回収業務をできる法律事務所は限られていますが、その中でいろいろ試してみて、こっちのほうがいいわということで、乗り換えられたり。それはもう会社さんの利益のためにいろいろ試されたらと思うんです。

田中 一般論として、よりよいところを探すための比較検討というんであればいいですよね。ただね、以前ある通販会社さんが、つねに3つか4つの事務所に分けて委託して、回収率を競わせていたでしょう。

下元 あれは、僕は賛成できないな。

田中 複数に頼めば競争原理が働いて回収率があがる、という意図だったんでしょうね。会社さんの方針もあるし、そういうふうに競わせたほうが頑張るんじゃないかというのもわかりますが…。

下元 いや、でもね、複数で競わされても変わらないですよ頑張りは。だって、競ってるから頑張るということはないですもん。「試される」という点に関しては、つねに依頼者さんがいて僕らがいるわけだから、横並びの人がいなくても、依頼者との関係では毎月試されてるわけです。そこで手を抜いたら、ただ単に僕らが終わっていくだけの話です。ただ、そういうふうに工夫されている会社さんもあったという話やね。

田中 そもそも複数管理するのは大変やし。あまりおすすめしない形態ですよね。

 

一部だけの「お試し委託」でいいんです。

下元 話を「お試し委託」に戻すと、たとえば地域的な問題だったり、回収方法だったり、いまの委託先に問題を感じている担当者さんは多いと思います。もっといい回収の方法があるんじゃないかと模索されてると思います。そんな中で、たとえば100件ぐらいとか、それを数回に分けてとか、そういう形ででもうちに依頼してもらえたら、効果を感じていただけるんじゃないかなと思いますよね。例えば僕らがこういう業務やってますという話をさせていただいたときに、すでに頼んでる弁護士さんがいるんでという話は当然あるんですけど、むしろそういう場合こそ、一部ちょっとやらせてもらえればわかっていただけるんじゃないかと。もちろん自社で回収されてるところは大変やと思います。そら、うちじゃなくてもどこかに委託したほうが絶対いいですよと思いますけどね。

田中 お試し委託といっても、実際のイメージが湧きにくいかもしれませんが。

下元 複数を管理するというのは委託債権を分けるところからまずコストがかかるわけですから、大変に思われるかもしれません。いくつかケースがありますよね。たとえば時間的なところで、ここからここまではやってもらって、ここから先は別のところに頼んでというようなやり方ですね。自社回収で何カ月かやってみる、そこから弁護士のところに頼んで3カ月、4カ月たって駄目だったものは引き上げて、少額訴訟とかをもうその自社でやってしまうとか。そういうことも、試していただいたらいいと思います。

田中 そうですね。本当に、「ちょっとお試し」でいいんです。何件からじゃないとダメとか、いろいろ条件があると思っておられるので。

下元 僕らが目指すのは、「みんなにとって良い」状態です。僕らがいて、債務者がいて、依頼者がいる。そこで誰が犠牲になってもよくないと思うんです。みんながハッピーになる方法を考えたときにも、「お試し委託」というのは悪くないですよね。

田中 そうですね。みんながハッピーになるのは回収率があがること。そのためには、ぜひうちにご相談ください。お試し委託には、何件からという決まりもありませんので!

 

対談4 他の弁護士事務所ではできない回収アプローチ

「なぜこのシステムを作ったんですか」と聞かれたら

田中 今日の対談のお題は、「他の弁護士事務所ではできない回収アプローチ」です。うちと他の弁護士事務所との大きな違いは、自社で開発した少額債権回収システムがあることです。今日は、システムを作ってくださった「アドバンス ブレイン」代表の白根さんにもお越しいただいています。

白根 よろしくお願いします。

田中 白根さんと最初にお会いしたのは、平成24年の春でした。もう丸4年になるんですね。

下元 少額債権回収の業務を始めることになったきっかけは、ある顧問先の会社さんで数百件規模の少額債権が発生したことでした。

白根 それまでも、もちろん債権回収業務はやってらしたんでしたよね。

田中 顧問先さんがご商売されてらっしゃって、その業務で発生する債権というのは、当然、僕らが顧問弁護士として請求していました。それが類型化されて、毎月、その債権を請求するという業務もずっとやっていたんです。回収業務は、司法書士さんも一定の金額まではできますし、サービサーが代行できる場合もあります。でも、本来は弁護士の仕事なんです。ご相談くださった会社さんは、サービサーに依頼すると規制の問題にひっかかり、頼める弁護士事務所もなくて困ってらした。当時うちには月に何百件という回収業務を行う体制はありませんでしたが、ご相談いただいたからには、弁護士として、自分たちが何とかしようと考えたのがスタートでしたね。

田中 白根さんとお会いする前には、その依頼者さんがコールセンターを作って、手紙も依頼者さんのほうで作るという話もあったんです。ただ、そうなると僕らの目が行き届かない部分が絶対出てしまうので、それは無理やとお断りしたんです。

下元 かといって、うちの事務所で何百件もの電話を掛けたり、大量の郵便物を送ったりするのも難しい。どうすればいいか? 既存のソフトなども探したけれど、良いものがなかった。考えた末、白根さんへのご相談に至ったわけです。大量の債権を扱っていく中で、ミスをしないためにはシステムが必要だったんです。複数の人間が対応していく中で話に齟齬が生じたり、請求書の送り先、金額などを間違えたりなどのミスが起こらないようにと。

白根 お二人がイメージされている仕組みをお聞きしたとき、おもしろそうやなと思いました。ただ、取り扱いたい件数を伺って、月に何万件とおっしゃったので、びっくりしましたけど…。

田中 月に何万件。そんなに大きく言ったんですね。

下元 そうそう。それを扱えるぐらいのシステムにしてほしいと、お話しました。

白根 実は、最初にお会いしたとき、お二人のことちょっと怖かったんです。

下元 怖かったですか?

白根 下元先生は、お話ししていると鋭いところも突っ込まれますし、田中先生は無言で見つめられると…。

田中 ……。笑

白根 でも、お話しするうちにだんだん、真面目に考えておられるんだというのが強く伝わってきて、安心感が強くなっていったんです。

下元 よかったです。

田中 白根さんの会社では、いろいろな企業のシステムを開発されているんですよね。

白根 はい。顧客管理をはじめ、工場の管理ソフトとかそういうものですね。生産、物流、在庫など。

下元 法律事務所からの依頼というのは?

白根 1回もないです。

下元 珍しいですよね。僕らも、債権回収のためのシステム作りましたなんて弁護士事務所の話、聞いたことないですからね。

田中 弁護士にはそもそも、設備投資をして新しい業務を行うという発想自体が湧きにくいと思うんです。ある意味、殻を破らなくても生活もできている中で、枠から外れた新しいことをしようという発想がなかなか出てこない。

下元 そうですね。でも、僕らはやると決めたので。具体的なシステムの話にしても、初めてのことばかりで、どんな形で要望を伝えたらいいのか、そもそもここをこうしてくれ、ああしてくれみたいな話が現実的なのかどうか、わからないことばかりでしたけど、やりたい内容は決まっていたので。

白根 でも、お話はわかりやすかったです。それに、基本的に、できないことはないんです。難しいのは、運用上、人がどこまで介在できるのかという、その調整だったりします。

下元 「システムでできないことはない」というのが白根さんの持論なんですよね。

白根 はい。

下元 最初に、交渉経過については必ずわかるようにとお願いしましたよね。

白根 そうでしたね。

下元 交渉を行うのは弁護士だけで、事務員は交渉しないんですけれども、どうしても債務者の方の要望を電話で伝言として聞くことがあるので、僕らの関与なく勝手に進まないようにしてほしいと。

白根 そうですね、はい。

下元 白根さんは弁護士業務とか債権回収業務については初めて知ることが多く、逆に僕らはシステムでわからない部分が多かったので、白根さんにはたくさんご苦労を掛けたと思います。

白根 1年近くディスカッションしましたね。

下元 その後の試行錯誤にも付き合っていただいて、いま、白根さんのおかげでうちの債権回収の仕事はできています。

白根 いえいえ。

下元 本当に。このシステムがなかったら、弁護士が少額債権回収の業務をするのは無理やと思うんです。

田中 ですよね。なんでこのシステムを作ったんですか?と聞かれたら、僕いつも言ってるんです。「やってみたらわかります。ないとできないということが」って。

 

コンビニ収納から“自慢の封緘機”まで

すべては回収率をあげるため

田中 白根さんにはいま、毎日事務所に来ていただいてるんですけど、最初は毎日ではなかったですよね。

白根 大きな仕事が入って、案件が急増したタイミングですね。

下元 ああ、そうだ。1日2,000枚ぐらいの手紙を送るという。

白根 仕事が増えて、やった!と思いましたけどね。ただ、あのときは手紙を全部、手で追って封筒に詰めていたんですよね。田中先生、下元先生も一緒に折っていただきましたが…。

下元 あれは大変でしたね…。

田中 みんなで折るといっても、1,000件超えるとね、こら、もうあかんと。

白根 これじゃあ回らないなというので、封入封緘械を買っていただきました。

田中 封緘機は不可欠ですね。紙入れて封筒をセットしたら、折って、中に入れて、糊付けしたやつが出てくる。自慢の封緘機です。

下元 町工場の魅力といいますか、機械が手伝ってくれてるという感じがいいですよね。ただね、白根社長自ら、ガチャン、ガチャンと作業してくださっているでしょう。それを見ると申し訳ないなと思うんです。

白根 いえいえ。

下元 あとは毎回、新しい依頼者さんの案件を受任すると、それに合わせて毎回インターフェイスを変えていただいて、いつもご苦労を掛けています。

白根 いえいえ。必要なことですから。

田中 僕ら、何度もバージョンアップをお願いしてますけど、コンビニ収納を導入したときは印刷が大変でしたよね。

白根 そうですね。あの印刷は大変でした。コンビニ側が読み取れるバーコードを作るために、何度も調整して。

下元 そのために専用のプリンター購入しましたもんね。

田中 でも、やっぱり回収率をあげたいというのがあるので、コンビニ収納はどうしても導入したかったんです。

下元 そうなんです。債権回収という仕事は、毎月この債務者の方にこれだけの未集金がありますというリストをいただいて、手紙を送って電話をかけて、回収できたらその分、依頼者にお渡しできて、うちの報酬も入るという単純な仕事なんですけれども、その中でどうすれば1%、2%債権回収率が上がるのかというのをつねに考えていて。

田中 回収率があがるのは、依頼者さんにも、債務者の方にも、みんなにとっていいことですからね。

下元 ということで、いろいろ新しいことをやっていかないといけないんですけど、白根さんには毎回、それに対応していただいて。今、実はこれがしんどいみたいなことってありますか?

白根 しんどいことはないですよ。今はひとつ、分割払いのデータに対する仕組みが足りないので、そこを何とかしたいなというのは考えています。あとは、どこまでシステム化していいのか?を考える必要があるのは、弁護士事務所ならではの難しさですね。

田中 なるほど。

白根 通常の仕事では、自動化になればなるほど喜ばれるんですけど。

田中 そうですよね。弁護士法の関係で、行きすぎたら駄目という部分がありますからね。

白根 弁護士法から外れない中で、オートメーション化されていて、肝心なところでは必ず人が介在する。そういう形でさらに効率的にできればと思うんです。

田中 そうですね。

下元 システムはどんどんバージョンアップされてきましたが、うちの事務所のほうの、使いこなす側の問題はありませんか?

白根 だいぶ慣れてもらってますよ。

下元 パッパとやってます?

白根 はい。やられてます。

田中 もう4年、ずっとやってますからね、みんな。

下元 おかげさまで、白根さんのシステムができてから、たとえば人を取り違えたりとか、そういうミスは一切ないですからね、今まで。

田中 過去1回もないん違います?

白根 ないですね。

下元 あれだけ大量の手紙を送っていてミスがない。さらにね、電話をかけてこられるのがご本人じゃなくご家族の場合もあるんですけど、その情報も大概すぐヒットしますから。そこは本当にありがたい、すごいシステムやなと思います。

白根 まだまだ改良の余地も残ってます。たとえば、住所で検索したいケースもたまにはあるんです。そういう機能も追加していきたいですね。

下元 住所で検索したいというのは、誰から入金されたか分からないときですか?

白根 そうです。請求書の宛名とは違うお名前で振り込まれると、照合が難しいんです。

下元 通常、ご家族だったら名字で探しますよね。あとは金額ですよね。

白根 ですね。

下元 1,095円だったら、1,095円の人を探すんですよね。入金された。

白根 そうです。それでも合わないとなった場合、果たしてこれは誰なのかという。銀行にも問い合わせますが、結局わからず迷宮入りしてしまうという場合もあります。

田中 人力で照合作業しないといけなくなるんですね。

下元 僕もこの債権回収の仕事を始めるまでは、まさかそんな状況があるとは思わなかったです。実際にお金を振り込んでいただいてるにもかかわらず、それが誰かわからないという。

白根 はい。そういう問題も、ひとつひとつ、システムで解消していきたいと思っています。

田中 ありがとうございます。

下元 今後、この業務を増やしていく予定ですけど、どうでしょう? 月数万件。大丈夫ですか?

白根 大丈夫です。まだまだ余力あります。バージョンアップもしていきますよ!